クレジットカードのポイント特典について、前回(1回払いは手数料がかからないのに、ポイントがもらえるのはなぜ?)はカード会社の立場でお話ししましたが、今回は利用する人の立場からお話ししたいと思います。

クレジットカードの多くは、利用するとポイントがもらえます。その制度はカード会社やカード商品ごとに違い、利用金額1,000円につき1ポイントもらえるものもあれば、100円につき1ポイントもらえるものもあります。また、ポイントの価値にも違いがあり、1ポイントが5円分であったり、1円分であったりします。

利用者にとってのメリットは、これらの組合せによって決まります。よくあるのは、1,000円ごとに1ポイント貯まり、200ポイントを1,000円分の商品券に交換できるものです。この場合、ポイントの価値を利用金額で割った「還元率」は0.5%になります。ほかにも、100円ごとに1ポイント貯まり、1ポイントを1円として使えるという、還元率1.0%のポイントサービスも増えています。

クレジットカードによる支払いは現金よりお得になる。

ポイント制度があることにより、クレジットカードによる支払いは、基本的に利用者にとってお得になります。お店はクレジットカードを使う人に対して、原則として現金の場合と同じ条件を提示しなければならず、クレジットカードの利用手数料などを上乗せするといったことはできません。現金と同じ条件が提示される以上、一定比率がポイントとして還元される分、利用者にとってクレジットカードの支払いはお得になるというわけです。

この原則は、カード会社とお店の契約にも盛り込まれていますが、さかのぼれば、国際ブランド会社(Visa、Mastercard、JCBなど)がルールとして定めていますので、基本中の基本の原則なのです。

しかし実際のところ、現金の支払いに限って値引きになるケースは見られます。これらは基本原則の趣旨に沿っているとは言えませんが、商習慣としてある程度根付いていることもあり、許容されているのが実態です。また、クレジットカードの利用手数料をとるお店が全くないわけでもありません。こういった場合、カード会社から0.5%~1.0%分のポイントがもらえても、損をするということはあります。

また、損得だけでは判断できませんが、購入を迷っているときに、ポイントがもらえるという理由で判断の基準がゆるくなることはないでしょうか。あと少し使えばボーナスポイントがもらえるといったとき、不要なものを購入してしまうこともあるでしょう。

ポイントを意識する人は、値引きよりも、値引きする金額と同等のポイントがもらえることを望むという傾向がみられます。冷静に判断できれば良いのですが、ポイントが多くもらえる特約店に目が向くあまり、別の店では売値が安いことに気付かないこともあります。ポイントはうまく使うものであって、ポイント制度にうまく使われないようにしたいところです。何をいくらで買うか冷静に決めたあとに、支払方法を考えたほうが、お得になる可能性は高まります。

リボ払いでも条件が整えばお得になる場合はあるが、ほとんどないと思っておいた方がよい

それでは、購入を決めたあとに、支払方法としてリボ払いを選ぶとどうなるでしょう。普通に考えると、金利がかかるためお得になるとは考えられませんが、「リボ払いならポイントが2倍」という場合、お得になることはあるのでしょうか。

損得を考えるには、通常時のリボ払いの金利とポイント還元率を考慮する必要があります。1ヶ月分の金利は、単純計算で「リボ払いの残高×金利÷12」となります。通常時のポイント還元率を1.0%として、30,000円の商品を購入した場合の実質負担額で比較してみたいと思います。
まず、1回払いの場合は、金利がかからないため支払金額は購入金額である30,000円となります。もらえるポイントは購入金額の1.0%相当である300円分で、これらを差引した29,700円が実質負担額です。

次に、金利が15%のクレジットカードでリボ払いすると、支払金額は30,000円の購入金額に、1ヶ月目で375円(30,000円×15%÷12)の金利がかかります。一方、ポイントは2倍の600円分がもらえますので、差引すると29,775円の実質負担額となり、1回払いのときと比べて、1ヶ月目の時点で75円分損していることになります。

最後に、金利が10%のクレジットカードでリボ払いをする場合、1ヶ月目の金利負担は250円(30,000円×10%÷12)になります。ポイントは2倍の600円分もらえますので、実質負担は29,650円となり、1ヶ月目の時点では、1回払いと比べて50円分得していることになります。

ここで少し余談になりますが、金利の計算方法はカード会社によって違いがあります。購入金額である30,000円を1ヶ月目のリボ払い残高として計算するカード会社もあれば、初回の引落金額を差し引いた金額(たとえば毎月10,000円の支払いコースの場合、残額の20,000円)をリボ払い残高として計算するカード会社もあります。

金利が発生する基準日にも違いがあり、1ヶ月目の金利は「購入金額×金利÷12」より少なくなることが多いようです。このことから、1ヶ月目の時点では、ポイントが2倍になることによるポイントの増額分(通常時との差分である、購入金額の1.0%分)がリボ払いの金利を上回り、1回払いのときと比べてお得になるケースはあるということになります。

ただし、1ヶ月目の時点では得をしていても、2ヶ月目に金利を支払った時点で損となるケースがほとんどでしょう。支払いコースを変更し、毎月の支払金額を30,000円などに引き上げておいたり、リボ払い残高の一括返済をカード会社に申請するなどして、ほぼ1ヶ月で支払いを終えるようにすることが、「リボ払いでポイント2倍」で得をする前提条件だと言えます。このような場合、ポイント2倍の対象外となることもあるため注意が必要です。何より、本来リボ払いが持つ、毎月の支払いを一定金額にするというメリットを受けることはできません。裏ワザとして、お得にする方法があるという話です。

リボ払いはポイントを稼ぐものではなく、困ったときの最後の手段くらいに考えておきましょう

裏ワザが悪いわけではありませんが、利用者が得をするということは、カード会社が損をすることを意味します。カード会社が、別のどこかから手数料をもらっているといったことはありません。

カード会社にとって損をする可能性がある制度を続けるのはなぜでしょうか。リボ払いを一度もしたことがない人に比べて、一度でもリボ払いをした人のほうが、後からリボ払いを選択しやすくなる傾向があります。別の言い方をすれば、安易にリボ払いをするようになるということかも知れません。少なくとも現時点では、長い目で見てカード会社側にメリットがあるということでしょう。

リボ払いの金利は決して低くありません。クレジットカードには金利のかからないボーナス一括払いや、金利が低いボーナス2回払いといった支払方法もあります。どうしてもすぐに買わなくてはいけないものがあり、これらの選択肢があると理解したうえで、自分自身の返済計画に適しているといった理由があってリボ払いを選択するのは良いと思います。目の前のポイントだけではなく、長い目で見て考えたほうが、損得も含めて良い選択になるはずです。


加藤 総(かとう そう) コンサルタント(金融・決済・教育に関する新規事業支援)、ベンチャー企業役員等。クレジットカード会社に約10年勤務後、デビットカード事業の立上げに参画するため、インターネット銀行に転職。カード事業の責任者など、約7年勤務したあとに独立。現在は、金融・決済・教育分野の新規事業参入支援のほか、各種調査、講演活動等を行うかたわら、カード業界向けの専門誌「月刊消費者信用」への連載寄稿のほか、「カード決済業務のすべて」「電子決済総覧2015-2016」等への執筆協力を行う「お金」の専門家。


メルマガ皆さんは「ポイント還元率が高いから」「ポイントやキャッシュバックなどのキャンペーンが良かったので」「友人知人が使っているから」といった理由でカードを選ばれることが多いと思います。お得ばかりを追い求めてカードを作り続けるとたいていポイントが分散してしまいます。それは入口にフォーカスしているからです。

入口=どこで使うか、出口=カードになにを求めるか、決済金額=一年にどれくらい使うか。
この3つの要素が揃って、はじめて有効なクレジットカードを選ぶことができます。大事なことは最終的にクレジットカードに求めるものを明確にすることです。つまり出口を決めることから始まります。当サイトでは「出口から逆算して決済金額で最適化する」ことを提案します。

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