いくつかのクレジットカードを比べると、会費制度に違いがあります。「ゴールド」「プラチナ」といった上位ランクの場合、そのほとんどで会費がかかりますが、「一般」「クラシック」といった通常ランクの場合、会費が有料のもの、無料のもの、どちらも良く見かけます。そもそも、会費は何に使われているのでしょうか。また、会費制度に違いがあるのはなぜでしょうか。
本題に入る前に、クレジットカード会社にとっての売上について説明したいと思います。クレジットカード会社の売上には、大きく分けて「手数料」「金利」「会費」の3種類あります。
「手数料」とは、クレジットカードが使われるとき、お店からクレジットカード会社に支払われる手数料を指します。会員が負担するものではないため、普段皆さんが意識することはないと思います。
「金利」とは、会員がクレジットカードのキャッシング・ローン機能でお金を借入する際に支払う金利を指します。リボ払いや分割払いを利用するときにも金利(これを「手数料」と呼ぶ場合もありますが、ここでは「金利」としてお話しします)がかかります。
「会費」とは、会員の分担金です。金利と違い、クレジットカードや付帯サービスを使わなくても会費は発生します。
会費の使いみちは、会員サービスの運営・維持
クレジットカード会社は、これらの売上を何に使っているのでしょうか。明確に区分できるわけではありませんが、その売上を得るときにクレジットカード会社が負担する費用という見方で、主な項目を紹介します。
「手数料」を得るのは、会員が買い物でクレジットカードを利用するときです。その際にかかる費用は、口座振替をするために銀行に支払う手数料や、利用明細の印刷費や郵送費があるほか、カード利用者に付与する「ポイント」があげられます(詳しくは、(1)1回払いは手数料がかからないのに、ポイントがもらえるのはなぜ?もご参照ください)。
「金利」を得るのは、会員が借入やリボ払い、分割払いをするときです。クレジットカード会社は、貸付(会員にとっての借入)をする際、貸付の原資(元手となるお金)を銀行から借入しています。リボ払い、分割払いを含め、買い物の代金をクレジットカード会社が立替をする際も、立替の原資を銀行から借入します。銀行からの借入にあたり、クレジットカード会社は銀行に支払う費用(これも金利です)があります。これが金利による売上の使いみちの1つです。
このほか、会員がクレジットカードを使って借入や買い物をすると、クレジットカード会社から請求書が届きますが、すべての人が期日通りに支払いするわけではありません。このとき、クレジットカード会社は電話をかけたり、手紙を送ったりする費用がかかります。また、最終的に全額または一部金額が支払いできなくなる場合もあります。そうなると、その金額はクレジットカード会社にとっての損失、つまり費用となります。これらも金利の使いみちと言えるでしょう。
「会費」を得るのは、会員がいるときです。会員がいることで発生する費用には、保険会社に支払う盗難保険料などがあります。一方、クレジットカードを利用し、その代金を支払うまでの一連の業務は、システムで管理されています。このシステム費用や、会員からの問合せ対応をするスタッフの人件費は、会員がいなくても発生しますが、「会員がいる」状態にするために必要不可欠な費用です。つまり、これらを含め、会費の使いみちは、会員サービスの運営・維持にかかる費用全般だと言えます。
また、上位ランクのクレジットカードは会費が高いものですが、これらには空港ラウンジやコンシェルジェなどのサービスを付帯していることが多いです。上位ランクには上位ランクなりの会員サービスの運営・維持のための費用がかかっています。
「有料」も「無料」も、クレジットカード会社のもうけを最大化するための制度
会費の使いみちが会員サービスの運営・維持だとすれば、会費が無料の場合、会員サービスが見劣りするものなのでしょうか。必ずしもそうとは言えません。会費分の売上の減少は他の売上で補うものであり、会員サービスの劣化を前提にはしていないためです。と言うのも、クレジットカード会社にとっては、会費による売上よりも手数料や金利による売上のほうが大きいのです。クレジットカード会社は、会費を無料にすることで、会員数や利用者数、ひいては手数料や金利による売上が増やし、「もうけ」を最大化することを期待しているのです。
ただし、そううまくいくとは限りません。実際、今でも会費有料のクレジットカードは、通常ランクでも多く存在しています。その理由は大きく分けて2つあります。
1つめの理由は、既存会員に関するものです。現状、会費を支払っている既存会員がいる中、会費を無料にしてしまうと、少なくとも当面の売上が下がります。さらに、システム費用や人件費は急には減らせないため、「もうけ」は大きく下がる恐れがあります。本音を言えば、既存会員から引き続き会費をもらいつつ、新規会員は会費を無料にすることで多くの入会者を集めたいのですが、既存会員の反発を招きます。そこで登場したのが「初年度会費無料」という制度です。こうやってもうけを最大化しようとしているのです。
2つめの理由は、新規会員に関するものです。会費が無料だと多くの人が入会しやすくなりますが、「さほど使う気がない人」の比率が高くなる傾向があります。このことは、手数料、金利による売上が大きくは増えないことを意味します。なぜなら、会費有料でも入会するのは、「クレジットカードを使う気がある人」だからです。人数は少なくても、手数料、金利、会費の売上が確実に見込める会員です。
会費を無料にすることで会員数が2倍になるとしても、売上は数割増し程度かもしれません。何より、会員数が増えると会員サービスの運営・維持費用は増えます。特に、「ほとんど使わない人」が大量に入会すると、クレジットカード会社は大赤字になる恐れもあります。このため、既存会員がいない場合でも会費を有料とするのです。クレジットカード会社の立場になれば、あまり使わない人からは会費をとり、よく使う人には会費を免除したくなります。もうお気づきかも知れませんが、これが「年間10万円以上利用すれば翌年の会費無料」といった制度になっているのです。
会費が何に使われるのか、また、会費制度に違いがある理由について、ご理解いただけましたでしょうか。良い話には裏があると言いますが、「裏」が悪いことばかりではありません。ここまでお話ししたクレジットカード会社の台所事情も踏まえつつ、ご自身にあったクレジットカードを選ばれるのが良いと思います。ただ、中には会費無料でポイント還元率が飛びぬけて高いカードがあります。そこにはどんな裏があるのでしょうか…。これはまた別の機会でお話しできたらと思います。
加藤 総(かとう そう) コンサルタント(金融・決済・教育に関する新規事業支援)、ベンチャー企業役員等。クレジットカード会社に約10年勤務後、デビットカード事業の立上げに参画するため、インターネット銀行に転職。カード事業の責任者など、約7年勤務したあとに独立。現在は、金融・決済・教育分野の新規事業参入支援のほか、各種調査、講演活動等を行うかたわら、カード業界向けの専門誌「月刊消費者信用」への連載寄稿のほか、「カード決済業務のすべて」「電子決済総覧2015-2016」等への執筆協力を行う「お金」の専門家。
皆さんは「ポイント還元率が高いから」「ポイントやキャッシュバックなどのキャンペーンが良かったので」「友人知人が使っているから」といった理由でカードを選ばれることが多いと思います。お得ばかりを追い求めてカードを作り続けるとたいていポイントが分散してしまいます。それは入口にフォーカスしているからです。
入口=どこで使うか、出口=カードになにを求めるか、決済金額=一年にどれくらい使うか。
この3つの要素が揃って、はじめて有効なクレジットカードを選ぶことができます。大事なことは最終的にクレジットカードに求めるものを明確にすることです。つまり出口を決めることから始まります。当サイトでは「出口から逆算して決済金額で最適化する」ことを提案します。
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