
Money20/20 Middle Eastは、2025年9月15日から18日までリヤドで開催された世界で最も急成長しているフィンテックイベントです。金融セクター開発プログラム、サウジ中央銀行、資本市場庁、保険庁、共催者のFintech SaudiやTahaluf、そして創設パートナーのAl Rajhi Bank、Riyad Bank、SNB、STC Bank、Tamara、Visa、Vision Bankなど多くの協力のもとに実現しました。
イベントには38,500人以上が参加し、451のブランドと157社のスタートアップ(31カ国)が出展、2,200回を超える投資家ミーティングが行われ、51カ国から1,051人の投資家、40カ国から450人のスピーカーが登壇しました。
この記事によって分かること
- サウジアラビアの財務大臣によるキーノートスピーチ「戦略的展望と重点課題」
- デジタル時代における資本市場の進化
- ポスト・ウォレット時代:中東の決済の未来を形作るもの
- AI駆動型金融の台頭
- 預金の未来2025:フィンテックが先行—銀行は追いつけるか?
- Google Pay と Google Wallet:中東の決済の未来を支える
- トークン化された未来—資本市場とデジタル資産
- サウジアラビアにおける決済システムの進化
- Groqが切り拓くサウジアラビアにおけるAIインフラの未来
- 2050年の世界:AI、量子技術、気候変動が人類をどう変えるか
- 感じられる金融をデザインする
- 埋め込み型からあらゆるところへ—新しいB2B決済の時代
- OTP廃止とパスワードレスへの道
- 地域と世界をリードするAIインフラと革新
- ステーブルコインの飽和市場—生き残るために必要な条件
- 地域別インサイト:アジアのフィンテック動向
- 地域別インサイト:サウジアラビアにおけるProptechとFintechの融合
サウジアラビアの財務大臣によるキーノートスピーチ「戦略的展望と重点課題」


サウジアラビア王国のH.E. Mohammed A. Aljadaan財務大臣は、デジタル技術を活用し、持続可能かつ回復力のある経済を築くことの重要性を強調しました。サウジアラビアは「ビジョン2030」のもと、金融セクターのデジタル革命を推進しており、金融テクノロジー(フィンテック)企業数が急増、また電子決済の活用率も大幅に向上しています。
同国は国内外からの投資を呼び込み、金融市場は2.4兆ドル規模へ成長し、世界で最も急速に成長する市場の一つとなっています。Aljadaan大臣は、サウジをアフリカやアジアとつなぐ金融ハブとして位置づけ、スマートフォン普及率の高さと先進的な金融技術を活用して国際的な影響力を拡大しようとしています。
また、中央銀行や関連機関と連携し、金融エコシステムの開発、資本市場の活性化、電子請求書導入などのインフラ整備を推進しています。これらの革新的な取組みは、金融の安定性や安全性を確保しつつ、グローバルな協力と知識共有によって実現されていると述べています。
取り組みの一環として、政府の電子金融サービスプラットフォームや財務手続きの自動化を進めており、透明性の向上やコスト削減、ユーザー体験の向上に寄与しています。こうしたデジタル変革は、持続可能な経済成長を支え、サウジアラビアの世界的な金融センターとしての地位確立を目指すものです。
デジタル時代における資本市場の進化

・H.E. Mohammed A. Elkuwaiz 会長|資本市場庁
・Dr. Chris Brummer 創設者|Bluprynt
この講演では、サウジアラビアの資本市場がデジタル技術の進展によって急速に変革を遂げている現状とその背景について語られました。サウジ市場は多様な投資家層や商品構成により安定性を保ちつつ、クラウドファンディングなどのフィンテック技術を活用して新たな資金調達手段を拡充しています。AIの導入は市場監督に革新をもたらし、リスクベースの監督からデータフラグによる効率的なケース管理へと移行しています。サウジの市場監督システムは高度で、AIの導入により誤検知が約80%も減少し、監督効率が大幅に向上しています。
資産運用分野においては、過去5~6年で管理資産が約2倍の1.1兆サウジリヤルに達し、今後もVision 2030の目標達成に向けて成長が期待されています。資本市場の成長は国内外投資家の増加を背景に急速であり、オムニバス資産管理制度の導入や企業年金制度の整備など基盤強化も進んでいます。さらに国際的な柔軟型ファンドやオフショアライセンス制度の整備により、サウジ金融市場の国際化も進展しています。
講演者は、サウジアラビアの資本市場の急成長は金融的実体経済への資本配分効率の向上と経済成長を両立させているとしつつ、過剰なレバレッジ増加への警戒も示しました。現在、公的部門のレバレッジ率はGDPの60~70%程度で低水準に保たれ、民間でもレバレッジ比率は近年むしろ減少傾向にあります。こうした進展の中で依然として石油依存の経済構造があるため、市場のボラティリティや財政の変動リスクには注意が必要だと指摘しました。
全体として、サウジアラビアの資本市場はデジタル技術導入と規制改革に支えられ、金融の多様化・国際化を推進しながら、Vision 2030の経済変革を強力に後押しする重要な役割を果たしていることが示されました。
ポスト・ウォレット時代:中東の決済の未来を形作るもの


・Rinat Ablet |グループ最高収益責任者|Tiqmo
・Eric Lin|ディレクター|Tenpay Global(Tencent)
・Ali Bailoun|ゼネラルマネージャー|VISA
・Deniz Oran|EMEA決済パートナーシップ責任者|Google
・Ahmad S. Alrasheed|決済事業企画ディレクター|サウジ中央銀行
・Pratik Sawal|CPO(最高プロダクト責任者)|JISR
内容は、パネル参加者が自己紹介と意外な一面を話すところから始まりました。例えば、TiqmoのRinatは10年以上の柔術経験を持ち、TencentのEricは中国国外の国際展開に焦点を当てたTenpay Globalを紹介しました。GoogleのDenizは複数国での居住経験を持ち、サウジ中央銀行のAhmadは自国の急速なデジタル化推進を誇りに思っていると語りました。
議論では、サウジアラビアがわずか数年で70%以上のキャッシュレス率を達成したことを受けて、次の革新ステージとしてデジタルウォレットが保険、投資、融資など多様な金融サービスを統合し、ユーザーベースを拡大し付加価値を提供する必要性が強調されました。Tencentは中国のミグラントが世界各地に移住する中でウォレットを用いた国際的な金融接続を模索し、Googleはカードのトークン化を含む安全で便利な決済手段をサウジ市場に導入予定であることを発表しました。
サウジ中央銀行は革新と消費者保護の両立を重視し、規制環境を整備しつつも、多様なフィンテック企業が市場参加しやすいサンドボックス制度や法整備を展開しています。特に銀行口座と併用されるウォレットの増加や、未銀行・非銀行層の取り込み、店頭決済や個人間送金の成長が顕著です。
Visaは地域におけるカード決済の利便性や迅速化、安全性向上に関する技術革新を紹介。Tencentは「共有」機能による取引後のメッセージ送信で送金体験のソーシャル化を促進し、JISRはサウジが世界第2位の送金国として、多様なディアスポラ層のニーズに応じたサービス設計に注力していると述べました。
パネルはまた、スーパーアプリ戦略を持つTencentとGoogle、それぞれのアプローチの違いや、サービス統合の難しさ、顧客体験の重要性を議論。市場拡大に伴うサービス複雑化への懸念も示されました。
最後に、参加者は「フィンテック・決済領域は今まさに成長期であり、中東市場には大きな機会がある」「顧客中心のサービス提供を最優先し、慎重かつ前向きにデジタル化を進めるべき」とのメッセージで締めくくられました。
A
AI駆動型金融の台頭

・ダニエラ・ブラガ |創業者兼CEO|Defined.ai
本講演では、金融サービスにおけるAI技術の革命的な影響について述べられました。話者のダニエラ・ブラガ氏は25年以上にわたりトレーディングデータのマーケットプレイスを運営し、AIの歴史的進化を踏まえつつ、金融業界でのAI導入の特異性を解説しました。金融は規制が厳しく、資本市場の安定や信頼に直結するため、イノベーションの採用が慎重かつ緩やかなことが特徴だと指摘します。
彼女はAIの3大波として、古代の証券取引の起源から電子決済の導入、そして1990年代以降のオンライン・モバイル決済の発展を挙げ、現在はAI時代の初期段階にあると述べました。金融機関がAIを導入する際の意思決定では、モデルを自前開発するか、既存のオープンソース・クローズドソースモデルを調整・購入するか、さらに伝統的なAIと生成AI(GenAI)の適用範囲を見極めることが重要です。
また、金融業界固有のデータ戦略についても解説され、厳格なプライバシー保護・規制遵守の必要性から、モデルの内製化やデータ品質管理、説明責任の確保が求められています。多様なデータソースの統合や、AI専門知識と金融・法規制知識を兼ね備えたチーム構築の重要性も強調されました。これに伴うコストや運用負荷も考慮されるべき課題です。
最後に、今後のAI進化の波として「金融のジェネレーティブAI(生成AI)化」を挙げ、モジュール型のタスク専用エージェントが相互連結して複雑な業務フローを自動化し、消費者向けアプリや企業向けSaaSサービスの新たな形態を創出すると予測。聴衆に次のイノベーション創出への期待を促して講演を締めくくりました。
預金の未来2025:フィンテックが先行—銀行は追いつけるか?
・Simon Hardie|創業者兼CEO|Findexable
本セッションでは、世界的なデータを基にフィンテックが伝統的銀行を上回る預金成長、商品イノベーション、ユーザーエンゲージメントの現状と、銀行がパートナーシップやデジタル基盤、顧客戦略で巻き返しを図る動きについて語られました。
Simon Hardie氏は、過去15年でネオバンクが世界中で急速に増加し、現在では50の大手ネオバンクが持続可能で収益性の高いビジネスを展開していると指摘。世界銀行のデータを引用し、グローバルで80%以上の人が銀行口座を持つようになり、預金市場が激しい競争の場となっていると述べました。
特にパンデミック後、金利上昇により既存銀行の預金残高は増加したものの、フィンテックの攻勢がますます強まっており、顧客は従来の本口座からフィンテックのサービスを主な銀行関係として使う傾向が見られます。オープンバンキングの普及が顧客の選択肢を広げ、銀行には高い顧客維持力が求められる一方で、フィンテックはスピーディな商品展開やパーソナライズドサービスで優位に立っています。
一方で、銀行は信頼性の面で依然優勢であり、データ分析と動的な金利設定を活用し顧客ロイヤルティを高めていると説明しました。さらにネオバンクを含むフィンテックは規模の拡大と収益化を着実に進め、世界的に存在感を増しています。地域毎にはアジアやラテンアメリカ、アフリカなど市場規模の大きい地域がイノベーションをリードし、特にモバイルマネーの普及度が高いアフリカでは金融包摂や埋め込み型サービスが急速に進展しています。
最後に、預金ビジネスには顧客主導の自律性、柔軟な運営体制、オープンかつパートナーシップ重視の姿勢が重要であると説き、フィンテックと銀行が共に学び合いながら成長していく必要性を強調し、同氏の調査結果の公開を案内して締めくくりました。
Google Pay と Google Wallet:中東の決済の未来を支える
・Dmitry Stiran|決済パートナーシップ責任者(中東・インド地域)
本講演では、Google PayとGoogle Walletが中東地域のデジタル決済をどのように革新しているかについて語られました。Google Walletは単なる決済手段に留まらず、保険証や搭乗券、ロイヤルティカードなど各種のデジタル資産を一元管理できるプラットフォームとしての特長を持ち、Googleの他サービス(検索、YouTube、Chrome、Gmail)と密接に連携してユーザー体験を向上させています。
特に、Gmailに蓄積されたクーポンやポイント情報を活用し、Googleマップでは購入可能店舗の案内や個別の特典表示といった機能が提供され、ユーザーの購買行動を強力にサポートします。現在、Google Walletは世界100カ国以上で利用可能であり、中東では7か国(ヨルダン、レバノン、オマーン、カタール、UAEなど)で展開されています。
2025年9月にはサウジアラビアでGoogle Walletの正式ローンチを迎え、Androidユーザーはローカルのデビットカードやクレジットカードの登録・利用が可能となりました。交通系カード対応やQRコード含む各種カードの一元管理も展開中で、今後はeコマース決済対応も予定されています。
また、Google Walletは加盟店にとってユーザー接点として価値があり、フライトやコンサートのステータス更新、会員ランク変動のリアルタイム表示による顧客エンゲージメント強化機会を提供します。成功には銀行やカードネットワーク、加盟店との連携が不可欠であり、積極的にパートナーを募っていると述べ、参加者に連絡用QRコードの活用を呼びかけました。
最後に、参加者からの質疑応答を促し、プロダクトへの関心を高める形で講演を締めくくりました。
トークン化された未来—資本市場とデジタル資産
・Mo Ali Yusuf|CEO兼創業者|Fuze Finance
本講演では、トークン化が証券、不動産、代替資産のあり方をどのように変革しているかが紹介されました。特に、世界の大手金融機関や資産運用会社がトークン化に深く関与し、2034年までにトークン化資産市場が30兆ドルに達するとの予測が示されました。トークン化により、個人投資家も従来アクセス困難だった金融商品や不動産などに低額から投資・所有権取得できるようになり、金融包摂が促進されています。
トルコの海運会社が船舶をトークン化し、投資家が所有権の一部を取得して利益を得る事例や、コロラドのスキーリゾートがセキュリティトークンオファリングで資金調達を成功させた例などが紹介されました。また、NASDAQが株式市場全体のトークン化を申請し、取引時間や国境を超えた取引の制約が解消されるなど、伝統的金融とブロックチェーン技術の融合が進んでいます。
トークン化は決済の即時性、所有権の透明性、改ざん困難性を備え、コンプライアンス面でも有利であることが強調されました。サウジアラビアでも不動産トークン化が進展し、より多くの投資家が少額から参入可能になっています。さらに、大型ファンドのトークン化により、従来は高額投資家向けだった商品をより広い層に開放する動きも見られます。
講演者のFuze Financeは規制を順守したデジタル資産インフラを提供し、資本市場参加者や企業がトークン化商品や決済ソリューションを展開できる環境を整備しています。最後に、トークン化資産の市場拡大予測をクイズ形式で参加者と共有し、未来への期待を呼びかけて講演を終了しました。
サウジアラビアにおける決済システムの進化
・アブドゥレラ・A・アルデヒーム|執行事務担当アシスタントガバナー|サウジ中央銀行
本講演では、サウジ中央銀行(SAMA)が推進する決済産業の変革について述べられました。SAMAは近年、戦略の見直しを行い、変化の激しい環境下での役割遂行を強化するために「レジリエンス(回復力)」「卓越性」「影響力」「開発」の4つの柱を戦略の軸に据え、物理的・デジタル双方の国家決済基盤の発展に注力しています。
2019年のG20サミットで承認された国際的な枠組みを踏まえ、決済の高速化、低コスト化、アクセス容易化を目指し、グローバル機関と連携を深めています。国内では、RTGS(即時決済システム)の近代化や国際受容性拡大、多様な決済エコシステムの強化を推進しながら、サイバーセキュリティやデータインフラ、AI導入にも取り組んでいます。
サウジ経済のデジタル化を支える歴史的な施策として、90年代のRTGS導入や早期の電子決済プラットフォーム立ち上げ(SPAN、SAGAT)に触れ、近年の小売決済が2015年の18%から2024年には79%へと急増し、国際決済ネットワークの取り扱い件数も大幅に拡大していることを示しました。
SAMAはまた、オープンバンキング促進のための規制緩和やサンドボックス導入で新規参入者を支援し、イノベーション文化の醸成に努めています。全国規模の即時決済システム「SADAD」の導入により、24時間365日のリアルタイム送金が可能となり、経済成長の促進に寄与しています。
金融システムの安定性を保ちながら、柔軟かつ安全に革新を進める姿勢を堅持し、フィンテック等新規参入者との連携を強化。今後は口座連携決済やQRコードの相互運用性向上、トークン化やAI、ビッグデータ活用といった技術の実装に焦点を当て、金融包摂の推進と低コスト決済の普及を目指すと締めくくりました。
Groqが切り拓くサウジアラビアにおけるAIインフラの未来
・Chris Stephens|フィールドCTO|Groq
本講演では、Groq社がサウジアラビアで展開しているAIインフラ事業とその意義について語られました。GroqはAI推論処理に特化した独自設計の半導体チップを開発し、高速かつ低コストで大規模AIワークロードを処理可能なインフラを提供。サウジで稼働中の「Humane Chat」は、現地のチームが開発したアラビア語ネイティブの大規模言語モデル(LLM)を搭載し、サウジの文化に根ざしたAIチャット体験を提供している代表例です。
Groqの環境は、毎秒数百万トークンを処理でき、多様な金融機関やフィンテック企業のリアルタイムリスク検知、パーソナライズド顧客対応、インテリジェントな意思決定自動化など幅広いユースケースを支えています。講演者は、競合となる大手クラウドサービスとのコスト比較や処理速度の優位性を示し、AIビジネスの拡大に向け経済的に持続可能なインフェレンス環境の重要性を強調しました。
また、Groqが独自のソフトウェアツール群を提供し、複雑なAIモデルを効率的にチップに割り当て、開発者が関数呼び出しやツール連携を行いやすくしている点も説明。Groqはオープンソースモデルの運用にも対応し、世界各地で多数の開発者が利用しています。
地政学的リスクの影響を受けにくい北米製造を強調し、グローバル展開計画として、サウジを皮切りにカナダ、フィンランド、欧州、アジア、オーストラリアなどへ拠点拡大を進めていることも紹介されました。
最後に、AIによる自動化がもたらすスキル変化に触れ、従来の多くの技術がAIによって代替される一方で、付加価値を生み出す残りの部分に集中すべきだとの考えを示し、参加者に今後のキャリアや組織への貢献について考える契機を与えました。
2050年の世界:AI、量子技術、気候変動が人類をどう変えるか

・Brett King|創業者・理事・アドバイザー|Moven / barq / アラブ首長国連邦中央銀行
Brett King氏は、2050年に向けた社会変革をもたらすAI、量子技術、気候変動の影響について講演しました。コンピュータ性能がAIによって加速度的に向上する一方で、人間の適応は遅いため社会システムに大きな圧力がかかると指摘。気候変動による異常気象は2030年代に重大な経済損失を招く見込みで、食料安全保障問題や生態難民の増加なども深刻だと警鐘を鳴らしました。
世界の出生率低下は経済的負担の増大が主因であり、解決には経済システムの根本的見直しが必要と述べ、AIの進展が人類社会の根本的変革を促すと強調。特に産業規模のAI活用や自律的なサプライチェーン、スマートコントラクトによる自動金融システムの台頭を予測し、既存の銀行システムはAI時代に適応できず新たな技術基盤が必須であると語りました。
2050年代には中国が世界最大経済圏となり、再生可能エネルギーの大規模導入でAI革命を支えるとし、サウジやUAEがデジタル戦略により成功する一方、旧態依然の産業経済からの脱却が鍵になると述べました。労働自動化の進展により雇用喪失が進むため、ベーシックインカムやロボット・自動化からの税収活用など新しい社会保障が必要に。また、AI時代に向けた新たな経済モデルの模索を訴えました。
食料危機への対応策として都市型水耕農業や垂直農業、ラボ育成タンパク質の商用化が進み、AI技術による医療の進展で人間の寿命も大幅に延びると展望。量子コンピュータの登場により暗号化技術の刷新やセキュリティ強化が急務となり、世界の大国はポスト量子暗号へ移行を急いでいます。
未来の銀行業は完全デジタル化し、AIが個人の金融管理を担う「銀行5.0」へと進化。スマートグラスがリアルタイムで購買力や融資提案を提示し、自動運転車のサブスクリプション利用や機械同士が取引する経済も展開されると予測しました。2050年にはAIによる自律的マーケットプレイスが経済の過半数を占め、現金の価値は低減すると述べ、唯一の未来はデジタルとAIによる共進化であると締めくくりました。
感じられる金融をデザインする
・David Barton-Grimley|戦略ディレクター|11:FS
David Barton-Grimley氏は、技術一辺倒の世界においても人間らしさが重要であり、AIやオープンバンキングを活用したハイブリッドなユーザー体験の設計が信頼とロイヤルティを築く鍵であると講演しました。多くの金融機関が「パーソナライゼーション」を目標に掲げるものの、従来は顧客にとって意味のあるサービス提供が難しく課題も多かったと振り返ります。現在は、生成AIや第三者データの活用により、顧客の行動を精度高く予測し、適切なタイミングで関連性の高いサービスを提供できるようになってきました。
また、AIによるルーティン業務の自動化が進み、より多くの人間的接点を顧客に提供可能に。例えば、問い合わせ対応自動化やリスク管理、資産運用支援にAIを活用しつつも、複雑な判断や安心感を与える場面では人間の介在を重視するハイブリッド型のサービスが有効だと述べました。成功する金融サービスは、技術と人の感覚が融合し顧客体験を向上させるものであり、信頼構築やフォローアップのシームレスな切り替えが欠かせません。
さらに、実例として資産運用支援ツールや経費管理の自動化サービスを紹介。特にBBVAのジェネレーティブAIを使ったパーソナルコーチング型の貯蓄支援や、Rexの銀行取引明細から自動的に経費内容を推測するシステムが注目されています。これらは単なる情報提供ではなく、顧客の意思決定を促し、具体的アクションに結びつける点が新しい価値であると説明しました。
最後に、顧客が求める信頼度に合わせてAIと人間の最適なバランスを取ることの重要性を訴え、テクノロジーと顧客ニーズのマッチング、そしてボットから人間へのスムーズな引き継ぎが成功の鍵であると強調しました。講演後にはデモやさらなる交流機会も案内されました。
埋め込み型からあらゆるところへ—新しいB2B決済の時代
・Vijay Rao|APACシニアバイスプレジデント|TransferMate Global Payments
Vijay Rao氏は、グローバルな100以上の国でライセンスを持つTransferMateが提供する埋め込み型決済ソリューションと、そのビジネス間決済(B2B決済)の変革について語りました。従来の企業間決済は購入発注、受領、請求書照合、支払ファイル作成といった工程が手動や銀行を介して行われ、時間とコストがかかり、送金の可視化も困難でした。
TransferMateの技術は、購買管理システムと金融システムを統合し、請求書確認後にワンクリックで即座に多通貨支払いを完了させ、決済後の情報もリアルタイムで戻る仕組みを実現。これにより従来の多段階の仲介手数料や遅延、資金の所在不明といった問題を解消します。主に大手ERPや調達プラットフォームと連携し、事務効率化とコスト削減を進めています。
教育や給与支払い、多国間の支払処理ニーズにも対応。さらに、ステーブルコインなどブロックチェーン技術を使った即時決済への対応も視野に入れています。規制面では93の管轄でライセンスを取得し、コンプライアンスを重視しつつAI導入による効率化も試みています。
講演の質疑応答では現在の規制環境やステーブルコインの成長見込みなどが語られ、今後数年で大幅な市場シェア変化が予測されることを強調しました。全体として、B2B決済における埋め込み型金融は、企業のバックオフィス効率化だけでなく、迅速で透明性のあるグローバル送金の実現に貢献する革新的技術であると結論づけられました。
OTP廃止とパスワードレスへの道
・Toby Rush|最高経営責任者(CEO)|iDeem
Toby Rush氏は、進化する詐欺手法とそれに対応する金融機関や規制当局が採用する実践的な対策について講演しました。近年、詐欺手口はフィッシングやソーシャルエンジニアリング技術が高度化し、AIも悪用されるなど巧妙化しており、従来のOTP(二要素認証)は容易に突破される状況です。詐欺は時間と労力、コストをかけたビジネスとして拡大しており、偽装サイトによるクレジットカード情報盗難が10分で成立する例が示されました。
昔ながらの生体認証も限界があり、二要素認証はユーザーの負担が大きいため広範囲での利用には適していません。講演では、まず初期段階として簡易な不正アクセス防止策を順次取り入れ、フィッシング防止や行動パターン解析による不審検知を進めることが重要と述べられました。さらに政府や規制機関が推進する電子本人確認(eKYC)による厳格な初回認証と、その後のシームレスなユーザー体験の両立が鍵になると説明しています。
iDeemでは生体認証チップや暗号技術、AIを活用したユーザー行動分析を取り入れ、不正検知や多要素認証の効率化を図っています。認証は単なるパスワード確認に留まらず、ユーザーのデバイス利用履歴、操作パターン、購入習慣といった多面的データで信頼度を判断するアプローチが推奨されます。これにより、従来のパスワードやOTPに代わるより安全で利便性の高い認証環境の実現を目指しています。
最後に、講演中にライブデモを試みるなど技術の実践的検証も行い、参加者に新たな認証技術への理解と期待を促しました。
地域と世界をリードするAIインフラと革新
・Dr. Yaser Al-Onaizan|副CEO兼データ&AIモデル担当プレジデント|Humain
・Samrah Kazmi|デジタル倫理&AI最高イノベーション責任者|RESRG/ニューヨーク大学教授
本パネルディスカッションでは、AIインフラが金融サービスにもたらす変革について、地域とグローバル双方の視点から深掘りされました。Dr. Yaserは、AIの金融業界特有の役割として、バックオフィスのオペレーション自動化や多大なリサーチ業務の効率化を挙げ、投資調査やレポート作成がわずか数分で可能となることが重要だと強調しました。
また、AIの技術は善悪の双方に利用され、特に高度な詐欺では極めてリアルなデジタルヒューマン(人格を模倣可能なAI)が本物を騙るケースが出現していると警鐘を鳴らしました。これに対し、AIを駆使した詐欺検知技術も発展しており、今後は善悪の果てしないいたちごっこが続くと指摘しています。
Samrahは「主権AI」の重要性を説き、特に金融や医療など機密性の高い分野では、データのプライバシー保護や国内の規制枠組みに沿った運用が不可欠だと述べました。主権AIとは、自国でハードウェア・ソフトウェアのAIインフラを構築・運用し、重要情報管理を国際的な影響から守る概念です。これには技術的な人材も不可欠であると指摘しました。
将来展望として、AIの高度化により、投資判断など専門的分野で人間と見分けがつかないほど精緻な対話型AIや複数分野の知識を持つ万能AIが出現すると予測。文化的背景や伝統を理解し、多様な国や地域に最適化されたAIが求められるため、カスタマイズ性と個別化のさらなる進展が期待されています。
全体を通じて、AIの社会的・倫理的側面やインフラ面での課題と可能性が共有され、参加者に今後のAI技術のあり方と活用について考える示唆を提供しました。
ステーブルコインの飽和市場—生き残るために必要な条件
・Dr. Petra Janez|金融審議官|スロベニア共和国財務省金融監督総局
・Hatem Hachicha|イノベーション統括|カタール国立銀行
・Jorge Carrasco|マネージングディレクター(ブロックチェーン・デジタル資産)|FTIコンサルティング
・Tony Ashraf|マネージングディレクター兼中東・アフリカ地域テクノロジー&オペレーション責任者|ブラックロック
・Mohamed Fairooz|中東担当リード|SCベンチャーズ
本パネルディスカッションでは、世界で多くの金融機関や企業が独自のステーブルコインを発行する中、ステーブルコイン市場の飽和状態において永続的な成功を収めるための鍵となる要素について議論されました。参加者は、実用性、発行者の信頼性、厳格な規制遵守、エコシステムへの浸透度、透明性、そしてレジリエンスが、生き残るステーブルコインを見極める重要な基準と指摘しました。
Jorge Carrasco氏は、既に規制の明確化が進み、特に米国発の法整備により市場環境が整いつつあることに触れ、コンプライアンスとガバナンスの強化が成功の基盤と語りました。Hatem Hachicha氏は、ステーブルコインの重要な価値は高速な送金処理、トレジャリーマネジメントの効率化、そしてプログラマブル性にあり、将来的にはAIエージェントが一定の範囲内で取引を自動化する新たなビジネスモデルが拡大すると展望しました。
Dr. Petra Janez氏は規制当局の立場から、透明性とアカウンタビリティの確保が最重要であり、金融市場のシステミックリスクを防ぐための規制枠組み(DORA等)整備が進んでいると説明。また、安定性を図るためステーブルコインの多重分散化やセキュリティ強化が欠かせないと補足しました。
Mohamed Fairooz氏は、地域としての中東が世界市場と連携しつつ、先進的な規制環境と投資環境を整備し、この分野の発展を牽引する可能性を強調しました。
パネル全体を通じて、ステーブルコインの成熟化には技術的信頼性のみならず、発行者の社会的信用・規制整備・市場基盤、多様なパートナーシップが不可欠であることが示され、参加者に慎重かつ戦略的な姿勢の重要性を訴え閉幕しました。
地域別インサイト:アジアのフィンテック動向
・Monica Jasuja|最高拡張・イノベーション責任者|Emerging Payments Association Asia
・Simon Wong|プラットフォーム開発責任者|Goldhorse Capital
Monica Jasuja氏とSimon Wong氏は、急成長するアジアのフィンテック市場における最新トレンドについて議論しました。Monica氏は特に「ハイパーパーソナライゼーション」の重要性を指摘し、個々のユーザー行動や文化的背景を深く理解して適切な金融商品やサービスを提供することが求められていると述べました。これはAmazonによるパーソナライズの時代から進化したもので、金融分野でもAIを活用して高速かつ感情に訴えるサービス構築が進んでいます。
一方、Simon氏は香港やシンガポールで成功している構造化金融商品の取引プラットフォームの経験を踏まえ、中東地域、特にドバイやサウジアラビアでも同様の機会が拡大しつつあることを紹介。シェリーア法に準拠したイスラム金融への対応など、文化的特性への配慮が不可欠であると強調しました。
また、国ごとに規制や金融インフラが大きく異なるため、多国展開にはローカライズ戦略が必要で、フィンテック企業は協力して共通の基盤を築くべきだと意見が一致しました。技術的にはトークン化の活用でクロスボーダー取引の共通化が期待されており、これが国際的な金融融合を進める鍵になるとの認識が示されました。
参加者はアジアの多様な文化・経済背景を踏まえつつ、協働によって課題を克服し、利用者にとってよりパーソナルで利便性の高いフィンテックサービスの提供に向けて歩みを進めていることを確認しました。
地域別インサイト:サウジアラビアにおけるProptechとFintechの融合
・Yazeed Al-Shamsi|共同創業者兼CEO|Ejari
Yazeed Al-Shamsi氏は、サウジアラビアにおけるデジタル不動産ソリューションを提供するProptech企業Ejariの取り組みを紹介しました。Ejariは賃貸契約の電子化やシームレスな家賃支払いモデルを推進し、住宅市場の利便性向上とアクセス拡大に貢献しています。
特に、家賃支払いの柔軟なファイナンスが普及しており、多くの住宅利用者が前払いの負担軽減や分割支払いを選択できるようになっています。Ejariのプラットフォームでは、契約手続きから支払いまでを自動化し、賃貸住宅へのアクセス障壁を下げています。さらに、イスラム金融に対応した商品開発や個々の顧客データを活用したパーソナライズ化も進められています。
2015年以降、サウジの住宅市場で電子決済の利用率が大幅に伸び、Ejariは数百万ドルの出資を受けつつ、数百万人のユーザーにサービスを展開中です。地域の規制や文化的特性を踏まえた多様な提携先との協業も進み、デジタル経済のビジョン実現に向けた重要な役割を担っています。
講演では、デジタル化による住宅関連サービスの効率化と透明性向上、そして顧客体験の質的向上が強調され、ProptechとFintechの融合が今後のサウジの賃貸市場のスマート化・包摂的発展を促進すると示されました。

クレジットカードを選ぶとき、「ポイント還元率が高いから」「キャンペーンが魅力的だったから」「周囲が使っているから」といった理由で選んでいませんか?もちろん、それらも立派な判断材料です。しかし、目先のお得さばかりを追い求めてカードを増やしていくと、ポイントが分散してしまい、結果的に思ったほど貯まらない…ということも少なくありません。その原因は、「入口」にフォーカスしているからです。
入口=どこで使うか、出口=カードになにを求めるか、決済金額=一年にどれくらい使うか。
この3つを掛け合わせて分析することで、はじめて“本当に使える”クレジットカードが見えてきます。なかでも最も重要なのが、「出口=目的」を明確にすること。何を得たいのかがはっきりすれば、カード選びも自然と決まります。当サイトでは、「出口から逆算して決済金額に最適化する」ことを提案しています。
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