(写真)決済手段一覧(出所:Adidas(米国Webサイト))
既に米国の主要なECサイトでは、Klarna(クラーナ)、Afterpay(アフターペイ)、Affirm(アファーム)などのBNPLがVISA、Mastercardなどのクレジットカードとともに決済手段として利用できる。(写真)
そして、一括りで語られるBNPLだが、実はその成り立ちやサービス内容は様々である。BNPLは国毎の歴史、文化・習慣、そして既存の決済サービスに応じて異なる進化を遂げている。
今回、欧州、豪州、東南アジア、そして米国の代表的なBNPLサービスを紹介させて頂く。
この記事によって分かること
ECでの買い物に必須なklarna(スウェーデン)
BNPLのパイオニアは2005年設立のスウェーデンのKlarnaである。私が2016年以降参加している世界最大級のFinTechカンファレンスMoney20/20のセミナーでも、BNPLブーム以前から多くの観衆を集める注目企業である。
また銀行免許を取得したチャレンジャーバンクでもあり、欧州、米国など17ヶ国に進出し、2021年10月には決済サービス大手Stripe(ストライプ)との提携を発表した。
北欧では長い冬場は出歩いてショッピングするのも困難なため、オンラインショッピング(以下、EC)の歴史は長く、既に人々の生活に根付いている。そして、KlarnaはECとともに成長している。
最近ではトラブルは減ったものの、ECでは注文通りの商品が必ずしも届くとは限らない。そのため、商品を確認した後に代金を支払いたいというニーズは強いが、スウェーデンの15才以上のクレジットカード保有率は45%に過ぎない。(World Bank、2017年。以下同)
また、民間最終消費支出に対する決済手段別の割合も、デビットカードの39.5%に対し、クレジットカードは10.5%である。(日本クレジット協会、2018年。以下同)日本の15才以上のクレジットカード保有率は68%、民間最終消費支出に対する決済手段の割合ではデビットカードが0.5%に対して、クレジットカードは21.9%ということからも、スウェーデンではクレジットカードがあまり利用されていないことがわかる。
そのため、Klarnaはスウェーデン、そして欧州各国のECでのショッピングでは必須のツールとなっている。返済方法は30日以内の1回払い、4回の分割払い、6~36回までの長期分割払いから選択できるが、7回以上の分割払いでは利息を払う必要がある。
審査は即時判定されるが、審査項目はユーザーの職業や年齢、年収ではなく、換金性の高い商品を継続して購入していないか、配達先の住所は住宅か(ホテルやウィークリーマンションではNG)、普段と同じIPアドレスからの注文か、など取引自体の審査を行っている。
伝統的なショッピングスタイルを守るAfterpay(オーストラリア)
オーストラリアもBNPLが盛んな国で、2021年8月に決済サービス大手Square(スクエア)に買収された2014年設立のAfterpayが最も勢いがあり、既に米国、ニュージーランド、英国にも進出している。
そして、Layby(レイバイ)というオーストラリアならではのショッピング方法のなごりを残したサービスを提供している。
Laybyとは「今、お金がなくても、買い物はしたい」というニーズを叶えるショッピング方法で、欲しい商品を店舗で取り置きしてもらい、頭金と手数料を支払ったうえで、2週間毎に残金を支払い、商品の代金全額の支払いが完了した時点で商品を受取ることができる。
そして、Laybyの進化形がオーストラリアのBNPLであり、AfterpayなどのBNPL事業者が商品代金を前もって店舗に支払っているため、消費者は即時に商品を受取ることができる。
Afterpayの返済方法はPay in 4一択で、まず頭金を支払い、残りを2週間毎に3回で返済することになるが、オーストラリアの多くの企業が2週間毎に給与を支給しているため、返済も2週間毎となっているだけである。
返済方法も国それぞれの文化・習慣が影響しているのである。
クレジットカードに代わり「後払い」を担うKredive(インドネシア)
東南アジアはBNPLと相性が良い。インドネシアのEC市場は2025年までに530億ドルに拡大すると予想されているが、インドネシアの15才以上のクレジットカード保有率は2%に過ぎない。つまり、ECは成長するものの、ほぼ全ての国民が「後払い」手段を持っていない状態である。
インドネシアの代表的なECモールTokopedia(トコペディア)では、Indodana(インドダナ)、Kredive(クレダイブ)、HomeCredit(ホームクレジット)、BRI Ceria(ビーアールアイセリア)の4つのBNPLが提供されている。
2015年設立の家計簿アプリなどを提供するFinAccel(フィンアクセル)の子会社Krediveを例に紹介すると、支払い方法は2種類で、限度額IDR3,500,000(約2万7,000円)の無利息で手数料無しの30日以内の一括支払いか、プレミアムプランに加入していれば、3ヵ月、6ヵ月、12ヶ月の月利2.95%の分割払いを選択できる。
なお、プレミアムプランに加入するには、ベーシックプランで必要な氏名、住所、収入等の基本情報、KTP(Kartu Tanda Penduduk)と呼ばれるIDカードの写真のアップロードに加え、居住証明、収入証明が必要となる。
日本のPaidy(ペイディ)がメアドと携帯電話番号だけで翌月払いができるサービスと上位サービスのペイディプラス(個人情報の登録や本人確認が必要だが、3回払いなどの長期分割払いが可能)を提供しているのと同じく、金額、返済期間が異なる2種類の「後払い」を提供している。
支払いは銀行振込かコンビニ払いになるが、インドネシアでは広大な国土の津々浦々まで16,000以上の店舗数を展開する東南アジア最大のコンビニIndomaret(インドマレット)もあり、支払いに手間を取ることはない。
コロナ禍で急成長したAffirm(米国)
そして、米国でも、2012年にPayPal(ペイパル)創業メンバーが設立したAffirmが、コロナ禍での健康志向の高まりから、健康器具Peloton(ペロトン)のECサイトでのAffirmの利用が拡大し、収益を伸ばして話題となった。しかし、米国はクレジットカードの保有率は高く、BNPLを利用する理由がスウェーデンやオーストラリアとは異なる。
奨学金の返済を抱える若者が多く、借金であるクレジットカード離れが進むのも事実だが、クレジットカードを持ちたいが審査に通らない、またクレジットカードを限度額まで利用してしまったからという理由が目立ち、滞納や貸倒れなどのリスクが高いユーザーもBNPLを利用している。
そのため、米国だけではなく、英国、スウェーデン、オーストラリアなど世界各国でBNPLの審査がクレジットカードよりも甘いことが問題となり、規制の強化がはじまっている。
なお、AffirmもKlarna同様にユーザーの利息負担がないわけではない。1,000ドル以上の商品で12回以上の分割の場合には、最大30%の利息が必要となる。
BNPLは利息が不要なユーザーにとって素晴らしい「後払い」とも聞こえてくるが、条件次第である。ただし、クレジットカードのリボ払いよりは低い金利であることが多い。
BNPLの成長と金融危機は表裏一体
欧米豪、そして東南アジアの代表的なBNPL事業者を紹介したが、それぞれの国の文化・習慣、そして既存決済サービスにより異なる進化を遂げ、市場に適したサービスを提供していることがわかる。
日本はクレジットカード保有率が高く、コンビニ払いなどの「後払い」が充実する「後払い」大国のため、短期的には海外諸国のような爆発的なBNPLブームは期待できないが、海外で流行するBNPLのようなサービスを必要としている消費者がいるのも事実である。
ただし、単に審査基準を下げ、誰でも「後払い」を利用できるようにするのでは逆効果である。米国ではBNPLブームは、リーマンショック、サブプライムに続く、BNPLショックの前触れという懸念の声もささやかれている。
BNPLと呼ばれる「後払い」は消費者が快適にショッピングでき、販売店にとっても販売機会の損出を減少させることができる決済方法であるのは事実だが、BNPL事業者がサービス設計を誤り、消費者が利用方法を誤ると、多数の多重債務者を生む可能性があるサービスでもあることを忘れてはならない。
安留 義孝(やすとめ よしたか)
日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング事業本部 金融サービス事業本部 アソシエイトパートナー
1968年、横須賀市生まれ。明治大学商学部卒。
メガバンク系シンクタンクを経て、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。2016年以降、世界22カ国を訪問し、世界の金融、決済、小売の調査研究、および決済領域を中心にコンサルティング業務に従事。
「月刊消費者信用」の長期連載に加え、「月刊金融ジャーナル」などへの寄稿多数。セミナーインフォ、NCB Lab、ペイメントナビ、日本クレジット協会、金融財政事情研究会などでの講演多数。
代表著書は「キャッシュレス進化論~世界が教えてくれたキャッシュレス社会への道しるべ~」(金融財政事情研究会)、「テレワークでも成果を上げる仕事術」(マイナビ出版)、「世界デジタル紀行 日常生活に溶け込むDX」(共著・日本橋出版)、「BNPL 後払い決済の最前線」(金融財政事情研究会)(2023年3月)。
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